旅行に連れて行くなら要注意!移動中の健康トラブルとその予防法

旅行に連れて行くなら要注意!移動中の健康トラブルとその予防法

はじめに

ペットと一緒に旅行を楽しむ飼い主が増えていますが、長時間の移動は犬猫に大きなストレスを与え、体調を崩す原因になります。日本獣医師会の調査(2022)では、外出先や移動中の体調不良は旅行中のペットトラブルの30%を占めると報告されています。ここでは、乗り物酔い、脱水、ストレス、排泄トラブルなど、移動中に起こりやすい健康課題と、具体的な予防策を解説します。


第1章 乗り物酔いの仕組みとケア

1-1 乗り物酔いのメカニズム

乗り物酔いは、平衡感覚を司る内耳(三半規管)が揺れを感知し、視覚情報とズレが生じることで嘔吐反射やめまいを引き起こします。犬猫の約40%が車酔いを経験するとされ、特に仔犬・仔猫は発症リスクが高いです(Journal of Veterinary Behavior 2019)。

1-2 具体例:車中での嘔吐と元気消失

東京在住の田中さん宅のビーグルは、高速道路走行中に嘔吐後、車内でぐったり動かなくなりました。獣医師診断で“急性動揺症”と判明し、鎮吐薬と点滴で回復しました。

1-3 予防策

  • 慣らし運転:短時間のドライブから徐々に慣れさせる。

  • ケージ固定:ケージを揺れの少ない後部座席中央に固定する。

  • 空腹管理:出発2時間前までに軽い食事、直前は絶食とし嘔吐リスクを減らす。

  • 獣医師処方薬:獣医師に相談し鎮吐薬(セレニア®など)を使用。    


第2章 脱水と熱中症への警戒

2-1 移動中の脱水リスク

長時間の移動では犬猫が飲水を控える傾向にあり、呼吸や蒸発による水分損失が回復できません。夏季の車内は1時間で30℃以上に上昇しやすく、熱中症リスクが高まります(環境省熱中症情報サイト)。

2-2 具体例:高速道路休憩後の虚脱

埼玉県の猫カフェから里親宅に移動中、ガラスキャリー内の気温が急上昇。保護猫が呼吸困難を訴え、動物病院で輸液と酸素療法を受けました。

2-3 予防策

  • こまめな休憩:1〜2時間ごとに停車し水分補給と空気入れ替え。

  • 専用ウォーターボトル:キャップなしで舐めやすい給水器を用意。

  • 暑さ対策:クールマット、扇風機、遮光カーテンを活用し車内温度を25℃以下に保つ。


第3章 ストレスと行動トラブル対策

3-1 移動による心理的負担

知らない場所、音、振動は犬猫に大きな不安を与えます。京都大学の研究(2021)では、移動中のコルチゾール濃度が通常時の約1.8倍に上昇し、過度な不安行動を示す個体が多いと報告されています。

3-2 具体例:パニックによるキャリー破損

福岡県の犬は、初めての新幹線移動で強いストレスを感じ、キャリー内で暴れケージを破壊。軽度の打撲と脱臼を負いました。

3-3 予防策

  • 慣れ訓練:キャリーやカートに日頃から入れる習慣を作り、安心感を育む。

  • 安心アイテム:飼い主の衣類や愛用おもちゃを入れ匂いで落ち着かせる。

  • フェロモン製品:犬猫用フェリウェイ®スプレーで不安を緩和。


第4章 排泄トラブルへの備え

4-1 長時間移動のトイレ問題

移動中にトイレを我慢すると尿路感染症や膀胱炎のリスクが上昇します。特に老齢ペットや腎臓病を抱える子は要注意です。

4-2 具体例:バスツアー中の膀胱炎

大阪発日帰りバスツアーに参加したシニア犬は、8時間のツアーでトイレに行けず、帰宅後に頻尿・血尿の症状を示し膀胱炎と診断されました。

4-3 予防策

  • 休憩ポイント確認:事前にペットOKのサービスエリアや道の駅を調べる。

  • 携帯トイレグッズ:簡易トイレシートや折りたたみトレイを携帯。

  • 水分管理と誘導:途中で水を与えつつ、トイレシートに誘導する方法を練習。


第5章 長時間移動と身体的負担減らす工夫

5-1 関節・筋肉のこわばり

長時間の同じ姿勢は血流低下や筋肉硬直を招きます。関節炎を抱える子やシニアは特に痛みが増悪します。

5-2 具体例:フローリング床でのこけ

牧場見学ツアーで車内から直接タラップを使った犬は、硬い床でこけた衝撃で腰を打撲しました。

5-3 予防策

  • 滑り止めマット:キャリー内外に敷き、足腰への負担を軽減。

  • 休憩時のストレッチ:ペット用リードで軽く歩かせ、筋肉をほぐす。

  • クッション性の高いベッド:旅行用ポータブルベッドを使用し、快適な休憩スペースを用意。


第6章 緊急時対応と保険活用

6-1 ペット保険と緊急支援

旅行時はかかりつけ病院から遠くなることも多く、高額な救急費用が発生します。ペット保険で緊急対応をカバーし、飼い主の負担を軽減しましょう。2023年の調査では、保険加入者の80%が旅行時の安心感を評価しています。

6-2 具体例:高速道路PAでの搬送費用

東京−名古屋間を車で移動中、事故で骨折した犬を静岡県内で救急搬送。保険適用で手術費用の70%がカバーされ、飼い主は自己負担を大幅に軽減できました。

6-3 予防策

  • 旅行前に保険内容確認:手術・入院・搬送費用の補償範囲をチェック。

  • 緊急連絡先リスト:目的地近くの動物病院・救急センターを事前に調査。

  • 携帯・防水ケース:保険証・診察券を携行し、スマホに緊急アプリをインストール。


第7章 実践チェックリストと関連知識

項目 対策
乗り物酔い 慣らし運転・絶食・獣医師処方薬
熱中症・脱水 こまめ水分・クールマット・換気
ストレス管理 安心アイテム・フェロモン・慣れ訓練
排泄ケア 携帯トイレ・休憩ポイント把握
関節保護 滑り止め・ストレッチ・ポータブルベッド
緊急支援・保険 保険内容確認・病院リスト化

関連情報

  • 日本獣医師会「ペットと出かけるガイドライン」2022

  • 環境省「動物の愛護管理に関する全国実態調査」2021

  • JAF「ペット同伴ドライブの安全対策」2023


まとめ

旅行中の移動はペットにとって心理的・身体的ストレスの連続です。乗り物酔い、脱水、ストレス、排泄トラブル、関節負担、緊急時対応など、事前準備と対策を万全にして、安全で快適な旅を楽しみましょう。愛犬・愛猫との思い出を守るのは、あなたの備えです!