ニオイでわかる体調異変?口臭・体臭・排泄臭が示すサインとは

ニオイでわかる体調異変?口臭・体臭・排泄臭が示すサインとは

はじめに

犬や猫は言葉で体調を訴えられません。そのかわり、においの変化が健康トラブルの早期シグナルになることがあります。日本獣医内科学アカデミー(JCVIM 2024)は「家庭で最初に気づかれた病気の兆候」の上位に“口臭”と“排泄物の異臭”が入ったと報告しています。本記事では、においの生理学的な仕組みと、口臭・体臭・排泄臭の3 大カテゴリに分けて、病気が隠れているケース、家庭でのチェック方法、受診の目安を具体例とともに解説します。


第1章 においが発生するメカニズム

1-1 揮発性化合物(VOC)と細菌バイオフィルム

においは主に細菌がタンパク質や脂質を分解するときに出る揮発性硫黄化合物(VSC)、短鎖脂肪酸、アミンなどが原因です。口腔内や皮膚のバイオフィルムが厚くなると、これらの物質が高濃度で放出され、においとして感じ取られます。

1-2 基礎代謝とホルモンの影響

腎臓・肝臓・甲状腺など代謝臓器の機能低下で、血液中の老廃物が増えると体臭が強まる場合があります。甲状腺機能亢進症の猫では代謝過剰により汗腺の分泌が増え、脂っぽい体臭が出ることが報告されています。


第2章 口臭が示すサイン

2-1 歯周病由来の腐敗臭

  • 特徴:くさい生ゴミのようなにおい

  • 原因:歯石に繁殖した嫌気性細菌がタンパク質を分解し VSC を放出

  • チェックポイント:歯ぐきの赤み、よだれ増加、硬いフードを嫌がる

  • 放置リスク:細菌が血流に乗り心内膜炎を起こすケースもある

2-2 甘いフルーツ臭=糖尿病ケトアシドーシス

  • 特徴:熟したリンゴのような甘いにおい

  • 原因:血糖コントロール失調でケトン体が増える

  • 同時症状:多飲多尿、体重減少、元気消失

  • 緊急度:48 時間以内に治療しないと命に関わる

2-3 アンモニア臭=腎不全サイン

  • 特徴:漂白剤のようなツンとするにおい

  • 原因:尿毒素が血中にたまり唾液へ移行

  • 初期症状:食欲低下、嘔吐、被毛のツヤ低下


第3章 体臭が示すサイン

3-1 脂漏症による犬臭さアップ

  • 特徴:油っぽく、湿った雑巾のよう

  • 原因:皮脂過剰分泌+マラセチア酵母菌の増殖

  • ケア:低刺激シャンプー週1+オメガ3 脂肪酸補給

3-2 甲状腺疾患と猫の油性体臭

  • 特徴:ベタついた被毛と独特の脂臭

  • 診断の目安:シニア猫で痩せて食欲旺盛+体臭が強い時は血中T4 測定

3-3 肛門腺トラブルの魚臭

  • 特徴:腐った魚のよう

  • 原因:肛門嚢炎や分泌液詰まり

  • 対策:月1 の肛門腺しぼり、腸内繊維質増で便を硬く


第4章 排泄臭が示すサイン

4-1 尿のにおい

におい 可能性のある病気
強いアンモニア臭 膀胱炎・腎不全
甘い香り 糖尿病
腐敗臭 細菌性尿路感染

尿が濃い黄色でにおいも強い→脱水や腎機能低下を疑う。

4-2 便のにおい

  • 酸っぱい発酵臭:腸内細菌バランス崩壊、膵外分泌不全

  • 血液臭:消化管出血(メラenaの場合タール状)

  • 金属っぽい:内出血による鉄イオン臭

具体例:1 歳フレンチブルが酸っぱい下痢便。便検査でジアルジア陽性→3 日の薬で改善。


第5章 家庭でできるにおいチェック5ステップ

  1. すれ違い嗅覚法:抱っこしてゆっくり鼻を近づけ、普段のにおいを覚える

  2. 白タオルテスト:歯ぐきをタオルでぬぐい、変色・異臭を確認

  3. 寝起きチェック:朝一番の口臭・体臭変化は病気の早期サイン

  4. トイレ日誌:尿・便のにおいと色を週1でメモ

  5. 換気リセット:部屋を30分換気し空気をリセットしてから再チェック


第6章 におい異常を感じたら?受診の目安

においの種類 受診目安
甘いフルーツ臭(口) 当日中に受診
強いアンモニア臭(口・尿) 1〜2日以内
魚臭(肛門腺) 1週間以内にケア
軽い腐敗臭(歯) 2週間以内の歯科検診

まとめ

  • においの変化=体からのSOS と考える

  • 口臭は歯周病・糖尿病・腎不全の手がかり

  • 体臭は皮膚病・ホルモン異常・肛門腺トラブルの指標

  • 尿・便の異臭は泌尿器・消化器の早期サイン

  • 毎日の“におい観察”で早期発見・早期治療につなげよう

明らかにいつもと違うにおいを感じたら、迷わず獣医師に相談してください。