はじめに
犬や猫の一生を健康に過ごさせるには、体の基礎ができあがる“成長期”に何をするかが決定的に重要です。英国小動物獣医師会(BSAVA 2023)は「生後 12 か月以内の生活環境と栄養設計が、生涯の病気リスクを 60% 以上左右する」と報告しています。本記事では、①バランスの良い栄養管理 ②ワクチン&寄生虫予防 ③社会化と適切な刺激──この3つの習慣を中心に、具体例を交えながら解説します。読み終わった後には、自宅で今日から実践できるチェックリストが手に入るはずです。
第1章 バランスの良い栄養管理
1-1 子犬・子猫専用フードを選ぶ理由
成長期は体重が 1 週間で 5〜10% も増えるハイペース。AAFCO の栄養基準では、
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タンパク質:成犬の 1.3 倍、成猫の 1.5 倍
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カルシウム:成人の約 2 倍
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必須脂肪酸 DHA:脳と視覚の成熟に必須
とされています。成犬・成猫用フードではこれらが不足し、骨格の発育不良や免疫力低下の原因になります。
1-2 給餌量とスケジュール
月齢 | 1 日回数 | 目安カロリー(kcal/kg^0.75) |
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2〜4 か月 | 4 回 | 250 |
4〜6 か月 | 3 回 | 220 |
6〜12 か月 | 2 回 | 200 |
例:理想体重 5 kg の子犬(成犬時)→6 か月齢なら 220×(5^0.75)=約 657 kcal。袋の給与量と照らし合わせて分量を決めます。
具体例:ミニチュアダックスの子犬(3 か月、体重 2 kg)。子犬用フード 100 g=380 kcal なので、 220×(2^0.75)=約 330 kcal ⇒ フード 86 g/日を 4 回に分けて給餌。
1-3 おやつとサプリの扱い
総カロリーの10%以内が原則。しつけ用にはフードを取り分けても OK。カルシウムサプリは過剰摂取で骨の変形を招くことがあるので、獣医師指示がない限り不要です。
第2章 ワクチン&寄生虫予防
2-1 ワクチンプログラム(日本モデル)
週齢 | 犬(混合) | 猫(混合) |
8 週 | 1 回目(5〜6 種) | 1 回目(3 種) |
12 週 | 2 回目 | 2 回目 |
16 週 | 3 回目+狂犬病 | 3 回目+猫白血病(環境次第) |
抗体価が十分上がるまではドッグランやキャットカフェへ行かない方が安全です。
2-2 フィラリア・ノミダニ・内部寄生虫
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フィラリア:気温 14℃ 以上の月は月 1 回の駆虫薬。錠剤・滴下・注射型があり、小型犬や投薬が苦手な猫には滴下型が便利。
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ノミダニ:屋内飼育でも人や物から持ち込まれるため通年予防が望ましい。
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内部寄生虫:便検査を初回健診で実施し、回虫が出たら薬を投与。下痢が続く場合はジアルジアやコクシジウムも疑います。
2-3 実際のスケジュール例
シュナウザー(東京在住)
8〜12 月:フィラリア+ノミダニ合剤(チュアブル)
1〜4 月:ノミダニ単剤(滴下)
便検査:8 週・16 週・6 か月
第3章 社会化と適切な刺激
3-1 “社会化期”とは
犬は生後 3〜14 週、猫は 2〜7 週が社会化のゴールデンタイム。この時期に人・音・場所・他動物に良い印象を形成できると、不安や攻撃行動が大幅に減ると行動学で証明されています(J Vet Behav 2022)。
3-2 家庭でできる社会化トレーニング
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音刺激:掃除機・雷・チャイム音を小音量で流し、ごほうびと結びつける。
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ハンドリング:足先や耳を優しく触り、ペットが落ち着いていればおやつ。
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新しい場所:キャリーバッグで車に乗せ、短時間のドライブ→おやつで終了。
具体例:子猫に 3 秒間足を触り、落ち着いていればチュールを 1cm 舐めさせる。1 日 5 セット×2 週間で爪切り時の抵抗が 80% 減少
3-3 適切な運動量
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子犬:月齢×5 分を 1 回の運動時間の上限とし、1 日 3〜4 回。骨端線の閉鎖前に過度なジャンプは避ける。
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子猫:1 セッション 5 分程度の追いかけ遊びを 3〜4 回。キャットタワーで上下運動を促す。
第4章 よくあるトラブルとQ&A
悩み | 原因 | 対処 |
ふやかしフードを食べない | 温度が低い、匂いが弱い | 40℃まで温め、香りが立ったら提供 |
ワクチン後に元気がない | 軽い副反応(発熱) | 24 時間以内なら安静。39.5℃以上は病院へ |
夜鳴きが続く | 分離不安・トイレ不安 | 寝床に湯たんぽ+心拍音アプリを活用 |
まとめ
習慣 | 具体的チェックポイント |
栄養管理 | 子犬・子猫用フード、週 1 体重測定、カロリー調整 |
ワクチン・寄生虫予防 | カレンダー管理、便検査、投薬リマインダーアプリ |
社会化&運動 | 音・人・環境に小さな成功体験を積む、月齢×5 分ルール |
3 つの習慣をコツコツ続けることで、“健康の土台”は確実に強固になります。今日からあなたの子犬・子猫の未来を守る一歩を踏み出しましょう!