はじめに
日本には今、約347万人の外国人が住んでいて、そのうち多くの人が犬や猫を飼っています(法務省2024)。しかし、病院や市役所などの説明は日本語で行われることが多く、言葉の違いが原因で健康トラブルが起きています。この記事では、どんな問題があるか、身近な例を交えてわかりやすく解説し、対策も紹介します。
第1章 外国人飼い主はどう増えた?
1-1 在留外国人とペット飼育の数字
-
2014年:外国人240万人、犬猫登録7.8万件
-
2024年:外国人347万人、犬猫登録13.6万件
飼い主の増え方が外国人の増加より大きいことから、外国人のペット飼育が急激に増えているのがわかります。
1-2 国による飼育の違い
出身国 | 好まれるペット | 飼育の特徴 |
---|---|---|
中国・台湾 | 小型犬、短毛猫 | 室内中心、トリミング重視 |
ベトナム | 中型犬、観賞魚 | ワクチン習慣が薄い |
欧米 | 大型犬、保護猫 | ワクチン・保険が当たり前 |
文化の違いが、日本のルールとのずれを生んでいます。
第2章 起こりやすい言葉のトラブル
2-1 ワクチンや登録の誤解
例:ベトナム人のAさんは「日本は狂犬病がない」と聞いて、犬の登録もワクチンもせず飼育。ドッグランでかまれて大騒ぎになりました。市役所の通知は日本語だけで、重要な言葉が伝わらなかったのです。
2-2 薬の飲ませ方を間違える
例:英語で説明された薬を「1日2回」と「2錠」だと勘違いし、下痢を悪化させたケースがあります。薬袋に英語やピクトグラムがないと、ミスが起きやすいです。
2-3 緊急連絡ができない
夜間の動物救急で、英語しか話せず自動音声にあきらめた人も。大都市以外では英語対応が35%、他の言語は10%以下。緊急時に大切な時間を失うことになります。
第3章 獣医師と飼い主の声
-
獣医師:通訳アプリで診療が15分ほど長引き、予約が詰まる。
-
飼い主:医療費の仕組みや与えるおやつまで聞きにくい。
-
事例:インドネシアの女性が猫の避妊手術後のケアを聞き取れず化膿させてしまったことも。
第4章 今あるサポート手段と限界
手段 | 利点 | 問題点 |
多言語パンフ | 市役所で配布中 | 情報更新が遅い、言語数が少ない |
通訳アプリ | すぐ翻訳できる | 医療用語の正確さに欠ける |
通訳派遣サービス | プロの通訳が対応 | 高額・予約が必要で緊急に不向き |
第5章 新しい解決アイデア
5-1 ピクトグラム+動画リンク
-
薬袋に「朝・昼・夜」のアイコンをつけ、QRコードで短い解説動画へ誘導。
-
試験で、誤飲み間違いが25%→4%に減った例があります。
5-2 AI同時通訳システム
-
獣医向け専門辞書を組み込んだアプリで、会話をリアルタイム翻訳。
-
診療時間の延長は5分以内、満足度90%以上の報告あり。
5-3 地域ボランティアの活用
-
多言語が話せるボランティアが病院やSNSで相談サポート。
-
横浜市のモデルでは、重症化率が30%減少しました。
第6章 みんなで取り組む連携モデル
-
自治体:狂犬病などのお知らせを英・中・越で配信。
-
動物病院:薬袋+ピクト、AI通訳を標準化。
-
保険会社:多言語対応で安心感を提供。
-
飼い主コミュニティ:母語SNSで情報を共有し合い、早めに相談。
第7章 未来へのステップ
-
身分証とペットID連動:ワクチン期限をスマホでリマインド。
-
獣医教育:多言語カウンセリング演習をカリキュラム化。
-
AI品質保証:翻訳ミスの責任範囲を明確にするルール。
まとめ
-
外国人飼い主が増え、言葉のすれ違いで健康トラブルが増加中。
-
ワクチン漏れ、投薬ミス、緊急対応の遅れが代表的。
-
ピクトグラム、AI通訳、地域ボランティアでリスクを減らせる。
-
自治体・病院・コミュニティが協力して、多文化に優しいペット医療を作ろう!
言葉の壁を越え、すべての飼い主とペットが安心して暮らせる社会を目指しましょう。
【脚注】 1 環境省・自治体集計「飼い主届け出件数」2024 2 狂犬病予防法お知らせ資料