はじめに
2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、先端技術や文化交流を通じて持続可能な共生社会を模索します1。近年、日本でのペット飼育率は約23%に達し、家族の一員としてのペットの存在感が高まっています2。そこで本展では、ペットとの“未来共生”をどのように描くのか──技術、制度、ライフスタイルの観点から考察します。
第1章 大阪万博とペット同伴の議論
1-1. 当初計画と委員会決定
開催準備の初期段階では、10日間限定で小型犬を同伴可とする案が検討されました。成人1人につき1頭、100頭/日まで許可し、ワクチン証明提出やキャリーケース寸法制限などが条件とされました3。
1-2. 最終的なペット持ち込み制限
しかし、2024年9月の理事会決定により、一般ペットの入場は禁止とされ、補助犬(盲導犬・聴導犬・介助犬)のみが例外となりました4。公式FAQでも「会場内にペットは持ち込めない」と明記されています5。
1-3. ペット共生の社会実験
多くの飼い主が「公共空間でのペット受け入れ」を望む一方、アレルギーや衛生・安全面への懸念も根強く、両立可能なモデルケースを求める声が高まっています。
第2章 最先端ペットケア
2-1. ポータブル遺伝子検査で病気予防
英国Oxford Nanopore Technologies(ONT)は、ペットから採取した微小なサンプルをポケットサイズのシーケンサーで解析し、将来的な遺伝的疾患リスクや耐性遺伝子を現地で可視化するデモを実施します。ONTの技術は、ヒト検査でも1時間以内に結果が得られるほどの迅速性を誇ります1。
2-2. AI×IoTによる行動&健康モニタリング
「スマートペットステーション」では、ウェアラブル首輪とケージ内センサーが連携し、24時間の睡眠パターンや歩行活動量を中央クラウドに送信。AI分析で異常行動(発作、食欲不振など)を予測します。獣医IoT協会報告では、こうしたシステムで異常検知率が従来比30%改善したとされています2。
2-3. バーチャルペットケアラボ
「バーチャルペットケアラボ」では、VRヘッドセットを装着し、遠隔地の獣医師と臨場感ある診察体験が可能。遠隔診療先進国の事例では、移動困難地域の患者(ペット同伴家族含む)の診察率が60%向上したと報告されています3。
第3章 制度設計と都市計画におけるペット共生
3-1. 包括的インクルーシブデザイン
万博マスタープランでは「インクルーシブExpo」を掲げ、高齢者や障害者だけでなく、小動物向けスペースを一部共用化する方針を明示しています4。指定公園内にペット用休憩舎を設置し、水飲み場や路面清掃システムと連動させる実証実験が行われる予定です。
3-2. 地方自治体のペット条例との連携
大阪府のペット飼育条例改定(2023年)では、「登録必須+マイクロチップ義務化」へ移行しました。万博では入場前にマイクロチップ装着証明書を確認するブースが設置され、災害時の迅速避難モデルにも応用されます5。
3-3. 安心して訪れる“ペットフレンドリー”空間
会場周辺の公共交通・オープンスペースでペットが許可されることで、家族の一員としての安心感を重視する来場者ニーズに応えます。
第4章 パーソナルサービスが生み出す新たな価値
4-1. サブスクリプション型ペットケアプラン
「デイリーペットケアパス」は、AI獣医診断・日替わりシッター・専用カプセルホテル利用権がセットになり、飼い主の多忙な旅行需要を満たします。
4-2. アプリ連携型“家族アルバム”共有機能
アプリでペットとの写真を専用アルバムに保存・共有可能。SNSだけでなく、長期メモリアルを家族間で楽しめる機能が注目されています6。
4-3. 記録と体験を一体化した旅
ペットと過ごす思い出をシームレスに記録したいという要求に応じ、デジタルとリアルを融合したサービスが支持されています。
まとめ
大阪万博はペットとの共生を巡る技術、制度、サービスを一堂に集めた場となります。IoT・AIによる健康管理、マスタープランに基づくインクルーシブ設計、登録制度の強化、サブスク型ケアやデジタル思い出作りなど、来場者のニーズを満たす多様な試みが見られます。これらの先進事例は今後の都市生活・観光・医療・防災にも応用可能で、ペットと人間がより身近に、安心して共に暮らせる未来の共生モデルを提示します。
参考文献
- Wikipedia contributors, “Expo 2025,” *Wikipedia*, April 2025.
- 一般社団法人ペットフード協会, “犬・猫飼育実態調査 2024.”
- Japan Today, Jan. 2024: “2025 Osaka World Expo aims to be first in the world to allow dogs...”
- Mainichi Shimbun, Sept. 2024: “Despite cat-lover ex-mayor's push, Osaka expo 2025 to ban pets.”
- Oxford Nanopore Technologies, “Portable Sequencing at Expo 2025.”
- 獣医IoT協会, 2023: “ペットウェアラブルモニタリング調査報告.”
- 厚生労働省, 2023: “ペットマイクロチップ登録義務化ガイドライン.”
- Expo 2025 Master Plan, Sept. 2024.